SST連載・解説記事

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セキュリティ業界コラム 乗口の視点


今回は運用設計をテーマにゲストをお招きし対談を行いました。前後編に分けてご紹介いたします。(後編はこちらです。)

はじめに

今回は、企業の業務設計及び運用に関する調査、研究、開発、コンサルティング、技術支援、研修、教育及び出版業務を担っている運用設計ラボ合同会社シニアアーキテクトの波田野様にお越しいただきました。

セキュアな運用を実現するための運用設計やドキュメントの重要性と、今後の展望についてのお話を伺います。

波田野裕一

SSTはじめに、波田野さんのご活動や運用設計ラボについてのお話をお聞かせください。

hatano日本の運用現場では、日夜多くの人々がサービスやITシステムなどの運用業務に従事し、安定運用に多大な努力をされています。しかし、その努力が報われているという実感が現場では少ないようです。
運用設計ラボは、そのような現状を変え「より良い運用」を実現するための活動を営利・非営利の両面で行っています。

SST運用設計ラボの営利活動・非営利活動それぞれについて、詳しくお聞かせください。

hatano営利活動として、現在は、企業における運用業務の改善支援コンサルティングと、セキュリティに関連したドキュメント作成支援を主軸として行なっています。

非営利活動としては、運用業務の調査・研究のために、日本MSP協会の特別会員としてMSP(マネージドサービスプロバイダー)における将来の運用業務像に関する議論をリードしたり、クラウドサービスのユーザコミュニティで特定の専門分野に特化した支部の運営などに携わっています。

いずれの活動においても、運用業務に関連した新しい考え方や時代の変化をビジネス面、技術面それぞれから捉え、あるコミュニティで得られた知見を他のコミュニティに持ち込み、更に新しい知見が生まれるように意識的に動いています。

SST運用設計ラボの運用業務の改善支援とはどんなことをやっているのですか。そちらについてもお聞かせください。

hatano運用改善の支援については、訪問して個別の相談をお受けする相談型支援と、一定期間実際に運用現場に常駐する常駐型支援の2種類を行っています。
運用現場視点での「運用改善」はどうしてもその現場に閉じた局所的な改善に終始し、ビジネス全体での改善につながらないことが多いので、運用改善とは本来どうあるべきなのか、をお伝えしつつ、その現場にとって必要な運用改善とは何か、を具体化していきます。

「運用コストをゼロに」ではなく、「運用の価値を最大化に」

乗口雅充

SST「運用改善」というと、コスト削減だと思われがちですが、波田野さんのご意見はいかがでしょう。

hatanoずいぶん前から日本の運用現場では、「運用コストはゼロが理想」と言われている、という話をよく聞きます。
しかし、運用改善の活動は、運用コストはゼロにすることを目的にするのではなく、運用の価値を最大化することを目的にすべきですね。運用の価値を最大化する過程で、コストが下がることはありますが、コストを削減する過程で、運用の価値が拡大することはありませんから。

運用改善の支援においては、その運用現場が提供する「運用」の価値は何であるかを明確にすることが最も重要になります。

SST運用の価値というのは、現場だけで判断できるものなのでしょうか。

hatano運用とは経営の一部であり、事業によっては経営そのものであると私は考えています。
となると、運用の価値を決めることは経営判断であり、経営者もしくは事業責任者の関与無くして適切に決めることは不可能だと思います。

運用改善においては、何を優先し、何を割り切るか、という判断がとても大切です。
現場で判断できるレベルのものはもちろん現場で判断すべきですが、運用の根幹に関わるような価値判断を要する場面で、経営トップがどう考えているかはとても重要です。

運用設計ラボの運用改善支援では、経営トップの方に直接判断いただく機会をご用意いただくことを前提としております。
経営トップが納得する「運用の提供価値」が決まれば、その価値を維持・拡大していくには何が必要か、ブレることなく現場の方々と一緒に洗い出していくことができるわけです。

対談風景

SST経営側の判断する運用の提供価値が重要とおっしゃいましたが、そうなると現場が価値を認めてもらう事も必要になってくるかと思います。そのためには運用現場にはどのような能力が必要になってくるのでしょうか。

hatanoまず1つ目に合理的な業務設計を行う能力、2つ目にその業務設計をドキュメントに反映する能力、3つ目にドキュメントをベースに小粒のツールを作成維持する能力、これらが必要となってくると思います。

この中で、2つ目のドキュメント能力は極めて重要ですね。 客観化された業務は、ドキュメントを介して、現在の関係者や未来の関係者に共有されます。
適切に業務を把握し、セキュアな運用設計を行うためには、このドキュメントの品質が一定以上である必要があります。
しかし、日本ではドキュメント作成について体系だった教育がされてないためか、適度に読みやすいドキュメントに巡り合う機会は正直なところ稀です。非常に悩ましいところです。

SST他の2つの能力の重要度については、どうですか。

hatano業務設計能力が次に重要度が高く、ツール作成能力は専門家に任せることができるという意味で重要度は一番低いと考えています。
ただ、業務設計が不適切でツールに落し込めないようでは、適切な設計とは言えません。今後は、得意不得意はありつつも設計もドキュメント化も簡単なツールの内製もできる、という人材が求められていくと考えています。
これらに付随して、パブリッククラウドを活用する能力も求められていくでしょうね。

次回へつづく
2016年5月30日更新


プロフィール

乗口 雅充(のりぐち まさみつ)

株式会社セキュアスカイ・テクノロジー
取締役会長 乗口 雅充(のりぐち まさみつ)
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1962年、福岡県生まれ。1986年鹿児島大学工学部卒業後、株式会社リクルート入社。1997年某ネットワーク・インテグレーターのセキュリティ事業を担当し、2006年株式会社セキュアスカイ・テクノロジーを設立し、代表取締役を務める。同社にて、2018年3月より取締役会長に就任。

波田野 裕一(はたの ひろかず)

運用設計ラボ合同会社
シニアアーキテクト  波田野  裕一(はたの  ひろかず)
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ADSLキャリア/ISPにてネットワーク運用管理、監視設計を担当後、ASPにてサーバ構築運用、ジョブスケジューリング基盤および障害監視基盤のシステム設計・構築・運用設計に従事。2009年夏より有志と共同で運用研究を開始。2013年に独立して、運用設計ラボ合同会社を設立。

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